調査研究「夢中にさせる授業:夢中になれる学び」では、Apple Distinguished Schoolの認定を受けた、31か国323校で小学校から高等学校までの児童・生徒を担当する教師17,078人を対象に、授業での指導方法、教師の価値観、児童・生徒の学習意欲について調査を実施した。
その結果、ほぼすべての参加校で、学習者はデバイスを1人1台利用できる一方、テクノロジーの活用方法は、教科、学年、環境によって様々であることがわかった。調査によれば、充実した教育実践は、授業におけるテクノロジーの利用頻度が高いほど見られるようになり、特に児童・生徒による利用頻度が高い場合にその傾向が顕著である。さらに分析を進めた結果、世界各地の授業の多様なサンプルにおいて、児童・生徒による積極的なテクノロジーの利用(学習成果物の制作など)と児童・生徒の学習意欲のレベルには正の相関があることが明らかになった。
これらの調査結果は、授業での指導方法と児童・生徒の学習意欲との間にある絶えず変化する関係について知見を提供するとともに、教育的意図、状況、そして児童・生徒がデバイスを利用して主体的に学ぶ機会を支援することの重要性を浮き彫りにしている。
本研究は、Apple Distinguished School認定校とReflective Educational Researchによる共同研究であり、Apple Inc.から資金提供を受けて実施されたものである。
すべてのデータは、個人を特定できない方法による結果の分析と共有に教師が積極的に同意し、自発的かつ匿名で収集された。この研究の主任研究者および筆頭著者はDamian Bebell博士である。Kayla Burtがリードリサーチアソシエイトおよび第二著者を務めた。Christine YangとSamuel Fiorilloはレポートとダッシュボードのシステムおよび設計でこの調査をサポートし、Ruben Puentedura博士とZhexun "Cinna" Xinは追加の分析サポートを提供した。
調査はスポンサーから独立して実施され、参加校と結果を共有し、結果に関わらず調査結果を公表する権利が含まれている。両著者および研究スポンサーが本原稿を審査し承認した。
Bebell, D., & Burt, K. (2025).Engaged teaching: Engaged learning, An empirical study of teaching, learning, and student engagement across the K-12 community of Apple Distinguished Schools(夢中にさせる授業:夢中になれる学び、Apple Distinguished Schoolのコミュニティにおける指導と学習、および児童・生徒の学習意欲に関する実証的研究)[ホワイトペーパー]Reflective Educational Research.https://doi.org/10.13140/RG.2.2.10252.99206
著者一同、参加と発言をしていただいた一人ひとりの教師に感謝の意を表したい。Apple Distinguished Schoolコミュニティの協力と支援に深く感謝する。
「私の生徒たちの中には、iPadのツールを使って書く力、読む力を高めることができた生徒もいます。例えば、ある失読症の生徒はマイクを使い、書きたいことをiPadに入力させました。すると、彼は書かれたものを読んで理解することができたのです。彼は授業中、より意欲的になり、能力を大きく向上させているのがわかりました」
– 中学校で国語を担当する教師(ブラジル)
現代の教育改革において、世界中の小学校から高等学校までの授業におけるテクノロジーリソース利用の増加ほど、広範囲に影響を及ぼしているものはほとんどない。過去数十年にわたり、何百万もの教室で児童・生徒のためにデバイスが導入されてきた(Bebell & O'Dwyer、2010年)。児童・生徒に1人1台コンピュータを導入するプログラムは1990年には早くも始まっていた(Watters、2015年)が、インターネットやデジタルツールが日々の指導方法や学習方法に広範囲に取り入れられるようになったのは主に21世紀になってからである。新型コロナウイルスのパンデミックはこの傾向を予想外に加速させ、世界中の小学校から高等学校までのコミュニティは教育を継続させるため、デバイスを急ピッチで導入した。パンデミックの収束後、多くのコミュニティは、教育機関におけるデバイスの増加がもたらした教育機会と課題のバランスを取ることに苦慮している。小学校から高等学校までにおけるデバイス利用が広範に及んでいることを踏まえ、研究者たちは1人1台プログラム(およびその他のテクノロジー)が指導方法に対する教師のアプローチ(Bebell & Burraston、2014年)や、教授方略の転換(Bebell & Kay、2010年)、教室文化(Andrade Johnson、2020年)に与える影響について調査を行ってきた。また、教室で使用するテクノロジーが児童・生徒の学習方法(Zhengほか、2016年)や、学習意欲(同上;Bebell & Burraston、2014年)、学業成績(Bebell & Pedulla、2015年;Kennedyほか、2016年;Stoneman、2018年)とどのように関連しているかを調査した研究もある。
テクノロジーの利用と児童・生徒の学びの動的な関係をより良く理解するために、この研究では多くの基礎的な考え方を参考にしている。ピアジェ(1936年)のような第一世代の学習理論家の研究にもとづき、シーモア・パパート(1980年、1992年)は、コンピュータが学習者の思考の機会を拡大し、より深く、より有意義な学習を可能にすることを示す、構成主義的なフレームワークを構築した。テクノロジーの利用が当たり前になった今日、パパートのビジョンは利用環境という面では実現したと言えるかもしれない。しかし、児童・生徒が積極的に知識を構築し、斬新な方法でアイデアを探究するという、パパートが思い描いた可能性は、授業においていまだ十分には実現されていないのである。
さらに、Technological Pedagogical Content Knowledge(TPACK)フレームワークは、テクノロジーの導入を成功させる方法に関して、研究者や教育を実践する人々に広く影響を与え続けている(Mishra & Koehler、2006年)。このモデルでは、テクノロジーの導入を、教科内容に関する教師の知識(CK)、教授法(PK)、テクノロジーに関する知識(TK)という一段と大きな文脈の中に位置づけ、新しい教材を導入(または評価)する際の文脈的および教育的なニュアンスを、独立した重要なものとして捉えている。
最後に、今回の研究では、教師と児童・生徒によるテクノロジー利用の広がりを文脈に当てはめて理解する上で、PuenteduraのSAMRモデルも役立っている(Blundellほか、2022年;Hamiltonほか、2016年;Puentedura、2009年)。教育者の間で広く用いられているこのフレームワークは、テクノロジーの利用方法を、教育において意図されている用途にもとづき、Substitution(代用)、Augmentation(拡張)、Modification(修正)、Redefinition(再定義)に分類している。
SAMRモデルは、教師の教育的な意図が、新しい教材の設計、実施、評価にとって重要な要素であることを認めている。この研究において、SAMRモデルは、テクノロジーの利用が授業によってどのように異なるか、また、このような利用が児童・生徒の学習意欲とどのように関連しているかを理解するための視点を提供している。このため、ここでは単一の包括的な尺度ではなく、教師と児童・生徒のテクノロジー利用における具体的かつ固有の構成要素を考慮する。
この研究では、シンプルな記述的手法を採用し、17,078名の教師を対象に実施したアンケート結果を分析している。アンケートは、Apple Distinguished Schoolプログラムに参加している小学校から高等学校までの世界規模のコミュニティから、任意回答の形で収集された。
Apple Distinguished Schoolプログラムは、40か国以上、1,000を超える小学校から高等学校までの公立および私立の教育機関が参加する自発的なプログラムである。参加校は非常に多様だが、創造、協働、個別学習を促進するためにAppleテクノロジーを採用している点で共通している(Apple Distinguished School、2025年)。
プログラム資格条件の例:
先行研究を踏まえて、教師向けの新たな調査が開発され、教師の経歴、テクノロジーの利用、そして幅広い授業での指導方法、姿勢、授業観を把握することが可能となった(Bebellほか、2010年;LEGO、2025年)。このオンライン調査には、リッカート尺度、頻度尺度、自由回答の質問タイプが含まれている。2021年後半より、Apple Distinguished Schoolの認定校にこの研究への参加を依頼した。回答があった教育機関には、さらに詳しい情報とオンラインの教師向けアンケートへのリンクを送信し、ほとんどの回答者は15分以内にアンケートを完了した。
調査にもとづく研究は、教育工学の学術研究において基本的な手法でありながらも、多様な実践や授業観を大規模に捉える上で特に有用である。より大規模な研究や政策議論の一環として、適切に設計された調査は、指導方法と教師の貴重な視点について重要かつ実証的な知見を提供し、研究者や学校のリーダーがよりエビデンスにもとづいた判断を行えるようにする。
すべてのデータは、小学校から高等学校までの授業を受け持つ教師が、結果の分析と共有に積極的に同意し、自発的かつ匿名で収集された。
調査に参加した各校は、カスタマイズされたデータダッシュボードやPDFでのレポートを通じて、自校の結果や調査全体の結果にアクセスできる。実際、参加した323校は、Apple Distinguished Schoolのコミュニティ内および全体で、テクノロジー、指導、学習に関する、より実証的な振り返りを促進する最初の対象となった。しかし、Apple Distinguished Schoolのステータス以外に共通の支援プログラムや教育的なつながりはないため、学校や教室の環境によるばらつきが実践を比較する豊富な機会となっている。何千もの授業(そのすべてが注目すべきICT教育プログラムを有している)における累積的かつ集合的な価値観は、世界中で進化する授業での指導方法について、教師の声を反映した豊かな視点を提供している。
教師を対象とした世界的調査の測定項目
テクノロジー環境
授業と学習の状況
指導と学習の方法
姿勢と授業観
31か国(回答の36%は米国から)の323校、合計17,078名の授業を受け持つ教師が、Apple Distinguished Schoolの現状に関する調査に参加した。参加者の指導方法や授業観を探究する前に、参加した教師(その多くが複数の学年または教科を担当)について簡潔にまとめ、このユニークな世界規模のサンプルの背景情報を示すことが有用である。例えば、2,640人の教師が最年少の未就学児(幼児期教育、プレスクール、幼稚園)を、6,390人の教師が小学生(1〜5年生)を、6,116人が中学生(6〜8年生)を、7,085人が高校生(9〜12年生)を担当している。より具体的には、参加者はApple Distinguished Schoolのコミュニティ全体で、幅広い学年と教科を担当している。
さらに、この調査では、教師の年齢や指導経験などの人口統計情報も収集した。複数の学年や教科を担当していても、1人の教師につき回答は1回のみとなっている。
本研究は、テクノロジー、指導と学習の状況、教育方法に関して、これまでになく広い範囲から収集された世界規模のデータセットを対象としている。
多くの研究で、児童・生徒や教師が学校で使用するICTツールの傾向や種類を記録している。この調査では、すべての教育機関で児童・生徒に1人1台のApple製品が用意されていた。そのため、Apple製品とApple製品以外の違いや、共有型と児童・生徒1人1台型の利用の違いを直接調べることはできない。しかし、全323校の環境における教師と児童・生徒のデバイスの違いを明らかにすることは可能である。
2024年の結果では、iPadを主なツールとして使用していると答えたのは、教師が42%であったのに対し、児童・生徒は83%であった。さらに、iPadを使用している児童・生徒が、Logicool Crayon(23%)、Apple Pencil(55%)、外付けキーボード(56%)のいずれかを追加で使用しているかについても調査が行われた。
参加校の83%でiPadが児童・生徒の主なツールとして利用されている。
「生徒たちは、Apple製デバイスで撮影したスローモーションビデオを使って、空中に発射されたビー玉の落下点を分析することによって、ビー玉発射装置の射程距離をより正確に割り出し、投射物の発射角度と射程距離の関係を明らかにしました」
- 高等学校で美術、数学、理科を担当する教師(米国)
Apple Distinguished Schoolのコミュニティで最も頻繁に見られるテクノロジーの利用方法とは?
この研究は、学習の状況に加え、教師や児童・生徒のテクノロジー利用について、その多様さと頻度を調査する貴重な機会となった。具体的に言えば、本研究では、参加したすべての国、学年、教科について、授業での指導方法をまとめている。このような多岐にわたる環境を横断的に見た時に、サンプル全体で最も一般的かつ頻度の高い指導方法、学習方法、教育方法はどのようなものであったか?
以下の各グラフは、小学校から高等学校までの授業を対象としたこの世界規模のサンプルからの報告をもとに、指導方法および学習方法の種類と頻度をまとめたものである。
まず、典型的な授業時間において、様々な学習の状況や方法が占める割合(0〜100%)を教師に推定してもらった。
授業での指導方法のうち最も多く報告されたのは、批判的思考と自律型学習であった。
さらに、サンプル全体で児童・生徒によるデバイス利用の範囲と頻度を教師に推定してもらったところ、あらゆる授業環境で最も一般的な利用方法は、iPadまたはMacBookを使ってノートを取ること、予定表の管理、そしてインターネットを利用した調べ学習であった。その一方、プログラミングやロボット工学、メイカースペース、3Dプリンターの利用、または実社会の専門家との交流など、より多くの環境整備と時間調整を必要とする活動の発生頻度は低かった。
「生徒たちは、Keynoteの表でセルの条件付きハイライト機能を使って、ニューヨークタイムズの単語当てゲーム『Wordle』のオリジナルバージョンを作成しました。この基本的なプログラミングの授業は、言語能力育成カリキュラムの中の語彙学習シラバスとつながる本格的な内容で、学びを深めることができました」
- 中学校でコンピュータサイエンスを担当する教師(オーストラリア)
テクノロジー環境は調査対象の環境全体でほぼ同じであったが、教師の経歴、学年、教科によって顕著な差があり、多様な指導目標を達成するためのテクノロジーツールの利用方法にも大きな違いが見られた。
同じようなテクノロジー環境の教育機関であっても、テクノロジーの利用方法は大幅に異なっていた。教育機関の内部、あるいは各機関の間にあるこのような複雑さは、TPACK(Mishra & Koehler、2006年)が強調する文脈的および教育的なニュアンスや、SAMRモデル(Puentedura、2009年)が強調する教師の教育的な意図の重要性を浮き彫りにしている。
また、先行研究は、児童・生徒を中心とした意思決定や自立的思考のような、自主性を支援する指導方法が、児童・生徒の学習意欲の向上に直接つながることを示唆している(Yangほか、2023年)。調査対象の環境によるばらつきを調べると、より深い教育実践と、テクノロジーを頻繁に使用する授業との間には、ほぼ常に関連が見られた。つまり、調査全体の結果は、テクノロジーの利用と、より充実した教育実践との間に肯定的な関係があることを示している。因果関係は示されていないものの、そのような充実した教育実践と、1人1台のデバイス配備との間に強い関連性があることは、コンピュータ時代黎明期にパパートがすでに提唱しており、そのことは新型コロナウイルス感染拡大後の小学校から高等学校までの教育現場においても引き続き確認されている。デバイスの利用と授業での指導方法の関係を示す散布図からわかるように、教師(r = 0.33)、そして特に児童・生徒(r = 0.59)自身による授業でのデバイスの利用は、児童・生徒が授業中に自分の関心を追求できる機会の多さと正の相関がある。
教師による授業でのデバイスの利用は、児童・生徒が授業中に自分の関心を追求できる機会の多さと正の相関がある。
制作のための児童・生徒によるデバイスの利用は、児童・生徒が授業中に自分の関心を追求できる機会の多さと強い相関がある。
「学習者は(グループで)一つの詩について様々な側面から考察をします。例えば、難しい語彙の意味を調べたり、調査に役立つ画像を集めたりするのです。そして、プレゼンテーションを行い、全員で情報を共有して相互理解を深めます。詩の分析にはExplain Everythingを利用しています」
- 中学・高等学校で言語技術(英語)を担当する教師(南アフリカ)
30年以上にわたる研究の成果により、新しいテクノロジーの導入や利用を成功させるには、教師の姿勢と授業観が重要であることが実証されている(Fisher、1989年; Hiebertほか、1989年;Bebell & O'Dwyer、2010年;European Commission、2013年、2019年)。今回の調査の回答者は、児童・生徒が協働することの価値や役割に関して圧倒的に肯定的であり、全教師の93%が、自分のクラス環境において、それは「常に価値がある」または「たいていは価値がある」と答えている。
教師は協働だけでなく、批判的思考、個別学習、課題解決型学習(PBL)や事例にもとづく学習(CBL)、複雑な問題解決を促進する教育実践についても、その価値を一貫して肯定している。回答者の約70%が批判的思考について「常に価値がある」と認めており、63%以上が生徒の個別学習について同様に回答した。
指導方法で見られる差異と同様に、教師の信念をより詳しく分析すると、特定の指導方略をどのように評価するかは、教師によって顕著な違いが見られる。教育用ゲームやプログラミングなど、より専門的な取り組みについては、学年が上がるにつれて教師の評価は下がる傾向が見られた。対照的に、批判的思考や複雑な問題解決といった取り組みは広く支持されており、ほぼすべてのApple Distinguished Schoolの教師で一貫して肯定的な評価が示された。教師の授業観とその環境との関係を説明するために、4つの項目に対する教師の考え方をあらゆる学校段階で調査した。
「子どもたちは、iMovieを使ってテキスト、イラスト、音声を1つのデジタルストーリーにまとめました。彼らはトランジションやアニメーション、グリーンスクリーンを使った特殊効果などを活用してプロジェクトを編集し、さらによいものを作る方法を身に付けました。子どもたちはこのようなタイプの作品に取り組むことで、学習体験に夢中になることができます」
– 小学校で複数教科を担当する教師(メキシコ)
学習意欲の向上とは多面的な概念であり、多くの類型、定義、モデルがある。しかし、それは学習における普遍的な要素であり、個人の成長や成績と大きく関連している。現在、教育者や政策立案者にとって、児童・生徒の学習意欲に関する2つの傾向が課題となっている。第一に、比較調査研究で一貫して示されているのは、児童・生徒の学年が上がるにつれて、世界的に学習意欲のレベルが低下することである(von Davierほか、2024年)。言い換えれば、世界中の子どもたちは、それぞれの教育制度の中で学年が進むにつれて、学校への興味が低下していると報告されている。懸念すべき第二の傾向は、学習意欲のレベルが年々低下していることで、特に新型コロナウイルスによるパンデミック以来顕著である(Bălţătescu & Cernea‐Radu、2024年;Gallup、2024年)。
このような課題はあるものの、調査結果によると、児童・生徒の学習意欲はテクノロジーの利用を含む授業や学校の指導方法に影響を受けやすい特性があることが示されている(Li & Xue、2023年)。しかし、このような影響は、教師や授業という不確定要素やプログラムの忠実性と密接に関連していた(Bebell & O'Dwyer、2010年;Fisher、1989年; Hiebertなど、1989年)。
新型コロナウイルス感染拡大後の環境において、研究者や教育者は、児童・生徒がテクノロジーの個人利用には意欲的である一方で、教室では学習意欲が低下しているという大きな矛盾を解消しようと取り組んでいる。教育機関がテクノロジーに投資する場合、授業での指導方法やテクノロジーが、児童・生徒のより高い学習意欲やその他の成果をどのように後押ししているのか(あるいはしていないのか)を理解することが不可欠である。
Apple Distinguished Schoolの教師に対し、児童・生徒が「授業に積極的に参加」している時間の割合など、「典型的な」授業における様々な指導方法や条件での頻度を共有してもらうよう依頼した。ほぼ普遍的な教育理念と言える児童・生徒の学習意欲は、世界中のApple Distinguished Schoolコミュニティの全学年、全教科において、総じて高いレベルにあると教師は報告している。実際、調査全体(31か国、3年間)の結果によれば、教師は授業時間の平均78%で児童・生徒が積極的に参加していると推定した。以下の表と図では、参加したApple Distinguished Schoolコミュニティ全体における児童・生徒の学習意欲の割合を検証している。
このサンプル全体を見渡すと、児童・生徒の学習意欲の高さは学年によって異なっており、先行研究と一致する。ほかのすべての変数を一定に保ったまま全参加者を見る場合、児童・生徒の学習意欲は小学校高学年でピークに達し、中学、高等学校にかけて低下する傾向があった。
サンプル全体を通して、教科間の児童・生徒の学習意欲の差は小さいことが観察され、学習意欲には多くのカリキュラムや教育学的要素が関連していることが示唆された。全体的に、最も伝統的な教科(国語、数学、社会など)を担当する教師は多くの場合、児童・生徒の学習意欲で最も低い割合を観察した。しかし、小学校で一般的な学級担任制の学習環境は、授業への意欲に影響を与える重要な要因である点に留意する必要がある。
児童・生徒が使うデバイスの種類と学習意欲の間に見られる関連性は、MacBookを使ったプログラムが(学習意欲がもともと低い)高学年でより頻繁に導入されるという要素が混在するため、不明瞭になっている。そのため、学年を一定にしたところ、研究全体で児童・生徒のデバイスによる差はほとんどなくなり(逆転さえした)、iPadとMacの環境で、研究における学習意欲のパターンの全体的な差異は、平均的に見て同程度であることが示唆された。さらに、児童・生徒が教室でスマートフォンを主な学習用デバイスとして使用する少数の環境では、全体的に児童・生徒の学習意欲がより低いことが観察された。
教師の経験年数による児童・生徒の学習意欲の差は比較的小さいことが観察されたが、平均値が最も低かったのは、経験年数の最も浅い授業者(0〜5年)と最も長い授業者(36年以上)であった。米国の教師と米国以外の教師では、授業に意欲的に取り組んでいる時間の割合の推定値にほとんど差はなかった(77.3%)。
全学年、全教科において、教師は授業時間の約4分の3は児童・生徒が積極的に参加していると報告している。
「今年、私が授業に取り入れた革新的な指導方法の一つは、課題解決型学習(PBL)と組み合わせる形で『反転授業』のモデルを実施したことです。このアプローチでは、これまで授業中に説明していた内容を、あらかじめ撮影したビデオやオンラインの対話型教材によって、授業以外の時間に学習できるようにしました。児童は自分のペースでこれらのビデオを見たり、関連するアクティビティをこなしたりできるので、それぞれが自分のやり方で教材に取り組めました」
-初等特別支援教育を担当する教師(マレーシア)
児童・生徒や教師の取り組みは、成果とどのように関係しているのだろうか?
「Apple製デバイスを使うようになってから、子どもたちは100%熱中するようになり、学習にも真剣に取り組んでいます。創造的な一面も見られるようになりました。子どもたちにとっては初めての経験でしたが、デバイスやネイティブアプリを使いこなせていました」
- 小学校で算数を担当する教師(インド)
何千もの多様な教室環境において、教室でのテクノロジーの利用と児童・生徒の学習意欲の間には一貫して正の関係があり、特に、教師ではなく児童・生徒がテクノロジーを積極的に利用する場合に顕著であることがわかった。児童・生徒の学習意欲が時間や年齢とともに低下するという世界的な傾向を考えると、児童・生徒の学習意欲を高めるような授業環境や指導方法を探ることは非常に重要である。
回答した教師間でのばらつきを探ることで、授業での指導方法の違いが教師や児童・生徒の成果にどのように関連しているかを示すことができる。例えば、授業でコンピュータを使って情報を提示する頻度(授業時間の0〜100%)は、教師が認識している児童・生徒の学習意欲と正の関係があった(r = 0.3、p < 0.001)。一般に、情報の提示時にテクノロジーを使用する頻度が高い教師ほど、児童・生徒の学習意欲が高いと報告する傾向がやや強かった。
学習成果物の制作のための児童・生徒によるテクノロジーの利用は、児童・生徒の学習意欲と強い相関がある。
2024年の回答をもとに、テクノロジーの利用方法を含めた教室の状況の報告を総合すると、児童・生徒が学習成果物を制作するためにiPadやMacBookを使用している時に学習意欲との最も強い関連が観察された(ρ=0.30)。ほかの利用方法では、規模は小さいものの、やはり意味のある関連が見られた。例えば、情報を提示するための教師によるiPadやMacの使用は、学習意欲とρ=0.24の正の相関があった。
研究全体を通して、すべてのテクノロジー利用が、児童・生徒の学習意欲と重要な関係があるとは限らないことがわかった。例えば、毎日の学級活動の中で最も多く報告されているのは児童・生徒がデバイスを用いてノートを取ることだが、そのことと学習意欲との関連性は著しく低い(ρ=0.05)ことをこれらの調査結果は示している。この関連性は、ごく一般的な指導方法と、児童・生徒の学習意欲レベルの向上とより密接に関係がある「より深い」授業での指導方法との間に、重要な違いがあることを示唆している。
児童・生徒の学習意欲への効果が最も低い学習方法:
授業中にノートを取る
授業中にMicrosoft OneDriveを利用する
ロボット工学、メイカースペース、3Dプリンターを利用する
「子どもたちの調べ学習がはかどらなかったため、私はギリシャのアゴラやマヤ文明の市場で見かけるかもしれない人々についてそれぞれビデオを制作しました。子どもたちは聴覚や視覚に訴えかけるビデオの内容に強い関心を持ち、昔の人々の暮らしについて、とても多くの反応が返ってくるようになりました」
– 小学校で複数教科を担当する教師(英国)
この記述的研究は、シンプルなものではあるが、今後の調査と実践のために、いくつかの貴重な知見を提供している。第一に、調査の結果、小学校から高等学校までの授業において、テクノロジーの多様で多面的な利用が確認された。教師の経歴、学年、教科による違いを見ると、教育者は異なる指導目標に対応するために自発的にテクノロジーを取り入れていることを示唆している。同じようなテクノロジー環境の教育機関であっても、テクノロジーの利用方法、目的、頻度は大きく異なる。このような複雑さは、TPACK(Mishra & Koehler、2006年)で強調されている文脈的および教育的なニュアンスを考慮した研究の必要性を浮き彫りにするとともに、SAMRモデル(Puentedura、2009年)が示す教育的な意図の重要性を示唆している。
第二に、これらの結果から、テクノロジーの利用と、より深い教育実践との間に継続的かつ肯定的な関係があることが示されている。一般的に、児童・生徒のテクノロジー利用頻度が高いと報告している教師は、より深く、より高度な教授方略を採用していることも報告していた。因果関係は示されていないものの、充実した教育実践と、1人1台のデバイス配備との間に強い関連性があることは、コンピュータ時代黎明期にすでに提唱されており、そのことは新型コロナウイルス感染拡大後の小学校から高等学校までの教育現場においても引き続き確認されている。充実した指導と学習はあらゆる教室環境においても実現可能であるが、今回の結果は、テクノロジーがカリキュラムや授業内容の向上のために、よく使われる手段であることを示唆している。
第三に、教師ではなく児童・生徒が主体的にICTデバイスを利用する場合は特に、学習意欲とテクノロジー利用の間に、中程度の正の関係があることがわかった。また、報告には含まれていないが、児童・生徒の学習意欲は、教師の教育者としての指導力(ρ=0.23)および教育者としての達成感(ρ=0.22)と有意な正の相関があることが明らかになっている。逆に、児童・生徒の学習意欲は、教師の離職願望と負の関係にあることが研究全体で示されており、授業での指導方法や状況が教師の満足度や定着率に影響を及ぼす可能性を示している。児童・生徒の学習意欲が時間や年齢とともに低下するという傾向を考えると、児童・生徒の学習意欲を高めるような授業環境や指導方法を特定し理解することが重要である。また、子どもたちによるテクノロジーの個人利用に対する懸念が高まる中、教育向けに導入されたテクノロジーの利用を区別して考え、より良く理解することの重要性も、本研究は明確に示している。
このレポートでは、豊富なデータセットの調査から始まり、多様な国や地域の教師を対象とした世界規模のサンプルから得られた意見と指導方法を詳しく説明している。今回の調査結果は世界的に共通の傾向を浮き彫りにしているが、教科、学年、場所、そのほか教室や教師の特性に焦点を当てた今後の分析が引き続き有意義な知見をもたらすだろう。
どのような学校やコミュニティでも、アクションリサーチのような独自研究を含めて、調査結果にもとづく振り返りから恩恵を受けることができると私たちは考える。以下は、調査のためのツールやテクニックを活用して形成的あるいは総括的な振り返りに力を入れている、Apple Distinguished Schoolコミュニティの小中高等学校の例である。
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